養育費等を調停で取り決めたとして、相手が支払いをやめた場合にはどう対処すればよいですか。
- 執筆者弁護士 山本哲也
1 強制執行制度
成立した調停の効力について理解するには、強制執行制度について知っておく必要があります。
社会の紛争は、最終的には裁判制度によって法律的な解決が図られますが、解決内容を国家が強制的に実現させる制度を設けないと裁判制度が実効性のあるものになりません。これが強制執行制度です。
金銭を回収するための強制執行(金銭執行)は、支払いを命じられた者(債務者)の財産を差し押さえて、処分できないようにしたうえで、競売等の方法によって現金化して、その金員を判決で勝訴した者に交付するなどの方法で行います。
2 強制執行の方法
差し押さえる財産の種類により、動産執行(家財道具、商品等に対する執行)、不動産執行(土地建物に対する執行)、債権執行(給料債権、預金債権等に対する執行)等に分けられます。
勤務先が知れている義務者の場合は、給与の差し押さえが一般的であり比較的執行は容易です。
養育費の一部不履行がある場合には、以下の将来給付の差押えを行うことが考えられます。
3 将来給付の差押え
婚姻費用、養育費、扶養料等の扶養義務に係る定期金債権については、その一部の不履行があるときは、期限未到来の給付についても過去の不履行分の差押えと同時に差押えることが可能です(民事執行法151条の2)。そして、被差押債権が給与等の継続的給付に係る債権であるときは差押え後に受けるべき給付に及ぶ(民事執行法151条)ので、1回の差押えにより、義務者が退職しない限り継続的に給与からの回収が可能です。
また、一般の金銭債権のための差押えでは、差押禁止債権の範囲が給与や退職金の4分の3であるのに対し、養育費等給与等の継続的給付に係る債権の場合は2分の1に縮小され、差押えの範囲が拡張されます(民事執行法152条3項)。
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