セックスレスで離婚できる?手順、慰謝料について弁護士が解説
- 執筆者弁護士 山本哲也
「パートナーとセックスレスの状態が続いているので離婚したい」
配偶者との性生活がうまくいかないと、離婚を考えてしまうものです。ただしセックスレスだからといって必ず離婚できるとは限りません。
今回はセックスレスで離婚できるのかどうか、離婚を進める方法、慰謝料について解説します。夫や妻と性関係がうまくいかずお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
セックスレスの判断基準
「セックスレス」という言葉の意味は曖昧です。一般的に長期にわたって性交渉がない場合を意味しますが、どの程度性交渉がなかったら「セックスレス」になるのか、人によって感覚が異なるでしょう。
実は1994年、「日本性科学会」という団体がセックスレスに定義付けをしています。
「特殊な事情がないのに、合意による性交渉やセクシャル・コンタクトが1か月以上なく、その状態が長期に及ぶと予想される状態」と定義されています。
- 合意で行うセックスが1か月以上行われていない
- セックスレスの状態が今後も続くと予想される
- セックスできない特殊な事情がない
こちらの3要件を満たす場合にセックスレスといえるでしょう。
セックスレスで離婚できる?
それでは、セックスレスで離婚することはできるのでしょうか。
離婚できるかどうかは法律上の離婚原因があるかどうかが判断の分かれ目となり、法律上では次の5つが離婚原因と定められています。
①不貞(不倫)
②悪意の遺棄(突然家を出る、生活費を渡さない等)
③3年以上に渡って生死不明
④重度の精神病
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由
セックスレスは上記の①~④には該当しませんので、⑤の「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるかどうかが問題となります。
セックスレスで離婚できる可能性があるケース
それでは、具体的にセックスレスで離婚できる可能性があるのはどんなケースなのでしょうか。
- 若くて健康なのに、特に理由なく性交渉を拒まれ続けている
病気などで性交渉が難しいというような事情が無いにも関わらず、配偶者からの誘いを理由もなく一方的に拒否し続ける場合は離婚できる可能性があります。
- 相手が不倫していてセックスに応じてくれなくなった
セックスレスの原因が相手の不貞(不倫)行為にある場合も少なくありません。
そのような場合は、セックスレスではなく不貞行為が原因で離婚でき、さらに慰謝料請求も可能です。
関連リンク:慰謝料を請求する方法
セックスレスで離婚できない可能性があるケース
セックスレスが「婚姻を継続しがたい重大な事由」とみなされず、離婚できない可能性があるのは下記のようなケースです。
- 相手が病気でセックスできない
- 夫婦が共働きで時間が合わず、セックスできない
- お互いに年をとってセックスに苦痛を伴うので、相手が性交渉に応じなくなった
セックスレスで離婚する手順
セックスレスが原因で離婚するための具体的な手段について説明します。
まずは話し合う
セックスレスを理由に離婚したいなら、まずは相手と話し合いましょう。
セックスできないこと、子どもができないことなどに苦痛を感じている気持ちを伝え、相手も離婚に応じる気持ちになれば協議離婚できます。
合意が成立したら、協議離婚合意書を作成し、公正証書化しましょう。その上で離婚届けを役所に提出すれば戸籍が書き換えられて離婚が成立します。
関連リンク:協議離婚が成立するまでの流れや注意点は?
話し合いで決着がつかなければ調停を申し立てる
話し合っても離婚について合意できない場合、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。
調停では、調停委員が間に入って調整を進めてくれます。
ただセックスレスを理由にする場合、状況によっては離婚を思いとどまるよう説得される可能性もあるので、離婚したいなら強い決意をしっかり伝えましょう。
関連リンク:離婚調停の流れ
調停が不成立になったら訴訟を提起する
調停が成立しなかったとき、どうしても離婚したいなら離婚訴訟を提起する必要があります。
ただ訴訟では必ず離婚を認めてもらえるとは限らないので、セックスレスを証明できる資料があるかどうか、事前にしっかり検討しましょう。
具体的には、次のような資料があればセックスレスを立証できる可能性が高まります。
- セックスレスの悩みを日々記載した日記
- 相手からセックスを拒絶されたメール
- 通院やカウンセリングを受けた記録
- 相手の不倫の証拠
セックスレスが原因で慰謝料請求は可能?
夫婦が離婚する際に、有責配偶者(離婚に至る原因を作った責任のある配偶者)に対しては慰謝料請求が可能です。
それでは、セックスレスが原因の場合は慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。
「特別な理由もなく、一方的に性交渉を拒否している」ケースでは慰謝料請求ができる可能性があります。
ただし、セックスレスが原因で慰謝料請求ができても、金額は低額である場合が多いでしょう。ケースにもよりますが、数十万円前後か、もっと低額となる可能性もあります。
不貞行為が原因でのセックスレスの場合、慰謝料が高額に
なお、相手の不貞行為が原因でセックスレスとなってしまった場合には、不貞行為に対する慰謝料請求が可能ですので100~300万円程度の金額が認められる可能性があります。
ただし、婚姻期間・不貞があった期間・不貞行為の頻度等によって金額は変動します。
ご自身のケースでどの程度の慰謝料が請求できるか知りたい方は、専門家に相談されることをおすすめします。
まとめ
セックスレスが原因で離婚できるかどうかは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」と認められる必要があります。
具体的には、若くて健康なのに理由もなく拒否を続けるケースや、不貞行為が原因でセックスレスとなったケースです。
ただし、協議(話し合い)離婚や調停離婚であれば、上記のケースでなくとも相手が同意すれば離婚することが可能です。
セックスレスが原因で離婚する場合の慰謝料は低額となる可能性が高いでしょう。
セックスレスでの離婚をお考えなら、弁護士に相談を
セックスレスは、当事者にとって非常に大きな悩みとなるものです。
デリケートな問題ですのでなるべく当事者だけで解決をした方が良い面もありますが、離婚できるかどうかや、慰謝料の問題など、内容が複雑で判断が難しい面もあります。
ご自身が不利な状態になってしまわないよう、セックスレスでの離婚についてお悩みなら弁護士への相談をおすすめします。
山本総合法律事務所では、2007年の創業以来、数多くの離婚事件を解決してきました。ご依頼者様の5年後、10年後の幸せのため、これまでの経験とノウハウを駆使したサポート提供を行っています。
離婚トラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽にお問合せください。
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