家庭内別居が続いている場合の離婚方法
- 執筆者弁護士 山本哲也
長期にわたって家庭内別居状態が続いていたら、いずれは「そろそろ離婚したい」と考え始めるものです。
家庭内別居は実際の別居と違い、離婚原因として認められないケースもあるので注意しましょう。
今回は家庭内別居によって離婚する手順を解説します。
協議や調停なら家庭内別居で離婚できる
家庭内別居とは
家庭内別居とは、実際には別居していないけれども夫婦関係が冷え切ってお互いに没交渉となっている状態です。
- 同居しているけれどもほとんど顔を合わさない
- 挨拶もしない
- 食事も一緒にとらない
- コミュニケーションは子どものことなど最低限度
このような状態であれば、家庭内別居といえるでしょう。
家庭内別居で離婚する方法
家庭内別居している相手と離婚したい場合、「協議離婚」や「調停離婚」なら可能です。これらの離婚方法は「夫婦が離婚に合意」さえすれば成立するからです。
相手と話し合いをして離婚に合意ができれば「協議離婚」が成立します。
直接話し合って解決するのが難しい場合、家庭裁判所で「離婚調停」を申し立てて合意ができれば「調停離婚」が成立します。
家庭内別居で離婚したい場合、まずは相手との話し合いから始めてみるのが良いでしょう。
家庭内別居で離婚裁判になったらどうなる?
裁判では離婚が認められにくい
離婚調停をしても次のような場合は離婚訴訟をしなければなりません。
- 相手が離婚に応じない場合
- 財産分与、親権などの離婚条件で意見が合致しない場合
ただ家庭内別居の場合、裁判では離婚が認められにくいので注意してください。
裁判で離婚が認められるには、民法の定める「法律上の離婚理由」が必要です。具体的には「夫婦関係が破綻している」と認定されなければなりません。
現実の別居であれば、5年も経てば「婚姻関係の破綻」が認定されて離婚が認められるケースもよくあります。一方、家庭内別居の場合、関係があいまいなので「婚姻関係の破綻」が認められにくいのです。相手が離婚を拒絶する場合には離婚請求が棄却されてしまう可能性も高くなるでしょう。
また家庭内別居によって離婚する場合、基本的には慰謝料請求できません。慰謝料が発生するには夫婦のどちらかに「有責性(婚姻関係を破綻させた責任)」が必要ですが、家庭内別居の場合、どちらに責任があるともいえないからです。
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家庭内別居で離婚理由が認められるケース
家庭内別居でも、以下のような場合なら裁判で離婚できる可能性があります。
- 相手の不倫が原因で家庭内別居となった
相手が肉体関係を伴う不倫をしていたことがきっかけで家庭内別居となった場合、「不貞(不倫)」が離婚原因となるので離婚が認められます。
- 相手が生活費を払ってくれない
生活費不払いは「悪意の遺棄」として法律上の離婚理由になるので、離婚が可能です。
- DVやモラハラを受けている、受けていた
DVやモラハラがあると、婚姻関係が破綻しているとして離婚を認めてもらえます。ただし証明が必要です。
家庭内別居で離婚する手順
相手に離婚意思を伝える
まずは相手に離婚したいと伝えましょう。
相手も離婚に合意すれば、協議離婚が可能となります。
離婚届を出す前に、財産分与や親権、養育費などの離婚条件についてしっかり話し合いましょう。
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協議して合意し、離婚届を提出する
条件についてお互い合意ができたら「協議離婚合意書」を作成し、公正証書化するようお勧めします。
合意書を作成したら離婚届を作成し、役所へ提出しましょう。
離婚調停を申し立てる
協議しても離婚に応じてもらえなかったり、お互いの希望条件のすり合わせが難しい場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。
調停では調停委員が間に入って話を進めてくれます。
相手が離婚に応じ、財産分与、親権、養育費、面会交流などの条件に合意ができれば調停離婚が成立します。
実際に別居する
相手が離婚に応じない場合、実際に別居するのも1つの方法です。別居すると、相手にも「こちらが真剣に離婚を希望している気持ち」が伝わります。
また別居中、こちらが専業主婦であったり、配偶者よりも収入が低い場合には相手に生活費を請求できます。
相手にしてみると「生活費の支払いを終わらせるには離婚するしかない」状態となり、離婚する動機にもつながるでしょう。
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まとめ
家庭内別居で離婚するには、「協議離婚」か「調停離婚」で離婚する必要があります。
ただし、不倫や悪意の遺棄、DV・重度のモラハラがあれば「裁判離婚」が可能なケースもあります。
離婚を進めるためには、まず実際に別居する事も効果的です。専業主婦や配偶者よりも収入が低い場合には、別居時の生活費を「婚姻費用」として請求することができます。
弁護士に依頼すれば、別居や生活費の請求を離婚へ向けた戦略としてうまく使い、スムーズに離婚できる可能性が高まります。
家庭内別居で離婚を考えている場合、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。