「強度の精神病」(民法770条1項4号)はどのような場合ですか。
更新日:2023/04/26
- 執筆者弁護士 山本哲也
1 「強度の精神病」とは
「強度の精神病」(民法770条1項4号)とは、単に精神病に罹患しているだけで足りず、それが強度のもので回復が困難な状況にあることが必要とされています。
ここでの「精神病」とは、統合失調症、躁うつ病などを指し、アルコール中毒や認知症などは含まないと考えられています。
2 判断基準
(1) 精神病であるかどうか、それが強度のもので回復が困難な状況にあるかどうかは、医師等の専門的な判断によると考えられています。
(2) もっとも、判例は、「強度の精神病」に該当する場合であっても、民法770条2項を適用して、「諸般の事情を考慮して、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許されない法意であると解すべきである。」(最判昭33.7.25)としています。
すなわち、「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」という要件に該当しても、民法770条2項の解釈として、精神病を抱える配偶者の離婚後の生活についてできる限りの見通しを立ててあげるということが必要であることを示しています。
そこで、実際の訴訟においては、生活費や療養費の負担や配偶者に代わる保護者の存在、療養受入先等の療養看護体制が十分かどうかといった点が審理の重要なポイントとなり、原告が具体的な裏付けをもって、それらを立証する必要があります。
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