離婚時の年金分割について教えてください。

更新日:2023/04/26

1 年金分割とは

財産分与

 現在、施行されている公的年金制度は、国民年金(基礎年金)を基礎とし、それに厚生年金保険、共済年金と厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金、確定拠出年金(企業型)、職域加算部分を重ねたもので、いわば3階建ての構造になっています。

  年金分割の制度は、年金の2階部分、被用者年金(厚生年金と共済年金)に限られています。

・国民年金(1階部分)

 20歳以上の国民全員に加入義務がある年金。被用者(民間のサラリーマン、公務員等)に扶養されている配偶者(妻又は夫)は、納付を免除されています。

・厚生年金(2階部分)

 民間サラリーマンの年金。多くの場合は給与から天引きされ、企業が納付しています。

・共済年金(2階部分)

 公務員、学校教員の年金。多くの場合は給与から天引きされ、学校等の勤務先が納付しています。

・企業年金(3階部分)

 企業が独自で設けている年金制度

・共済年金(職域加算)(3階部分)

 公務員独自の年金上乗せ制度

  年金分割の制度は、夫婦の一方のみが働き、厚生年金保険等の被用者年金の被保険者等となっている夫婦が離婚した場合、婚姻中働いていなかった妻(又は夫)が働いていた夫(又は妻)の標準報酬等の分割を受けることができるとするものです。つまり、標準報酬等の分割を受けると、分割を受けた妻(又は夫)は、分割を受けた標準報酬等が自分のものになるので、これに応じて算定される老齢厚生年金等の支給を受けられることになります。したがって、この制度では、分割を受けた妻(又は夫)は、自身が老齢に達するまでは老齢厚生年金等の支給を受けられませんが、受給資格を得れば、改訂等がされた後の標準報酬(分割を受けた標準報酬)に基づいて算定される額の老齢厚生年金等を受給することができ、また、相手方である元配偶者が死亡したとしても、自分自身の老齢厚生年金等の受給に影響しません。

  なお、この制度は、当事者が受給している年金額の一部を他方に分けるというものではなく、一方の標準報酬を他方に分割し、分割を受けた標準報酬に基づいて、老齢厚生年金額等が算定され、この額の老齢厚生年金等を受給することができるというものです。

2 年金分割の方法

2−1.合意分割

   夫婦であった者の一方の請求により、厚生労働大臣等が当該離婚等について対象期間に係る被保険者期間の標準報酬等の改訂等の処分を行う制度です。その前提として夫婦の対象期間の標準報酬総額等の合計のうち、その一方に割り当てるべき割合(按分割合)を定める必要があります。この請求すべき按分割合は、夫婦であった者の合意で定めるのが原則ですが、合意のための協議ができない場合には、家庭裁判所が夫婦であった者の一方の申立てにより、請求すべき按分割合を定めることになります。

 

 2−2.3号分割

 夫婦の一方が被用者年金に加入し、他の一方がその被扶養配偶者として厚生年金保険法上の第3号被保険者と認定されていた期間(平成20年4月1日以降に限る)があるときに、その期間について、被扶養配偶者から厚生労働大臣等に対して年金分割請求をすることにより、保険料納付記録等を当然に2分の1の割合で分割する制度です。

   3号分割においては、分割の割合を個別に定める必要はありません。そのため、家庭裁判所が関与することもありません。

より詳しいことにつきましては、離婚実務に精通した弁護士にご相談ください。

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