夫と別居しようと考えています。別居後、夫に私の生活費を請求できますか。
更新日:2023/04/26
- 執筆者弁護士 山本哲也
1 婚姻費用
1−1.生活保持義務
夫婦は、互いに相手が自分と同等の生活を送れるよう保障する義務を負います。それを生活保持義務といいます。生活保持義務は、夫婦の同居中はもちろんのこと、婚姻中である限り、夫婦が別居していたとしても認められます。
1−2.婚姻費用
このような夫婦間の生活保持義務に基づき、夫婦の一方(原則として収入の多い方)が他方(原則として収入の少ない方)に支払うべきとされているのが、婚姻費用です。
1−3.婚姻費用の算定方法
- 算定表
婚姻費用については、現在、算定表に従い一定の基準額が分かるようになっています。この算定表は、裁判所のホームページなどで見ることができます。
例えば、妻が10歳と5歳の子ども2人を連れて夫と別居した場合を考えてみます。夫の収入が300万円、妻の収入が100万円の場合、婚姻費用の月額は4~6万円です。夫の収入が500万円、妻の収入が100万円の場合は、月額8~10万円です。
- 標準算定方式
算定表は、夫婦の一方が子どもを監護し、子どもが学齢期の場合は公立学校に通っているなどの一定の場面を想定しています。しかし、実際は、夫婦双方が子どもを監護している場合や、子どもが私立学校に通っている場合など、個別の事情はさまざまです。
そこで、算定表では解決できない事案については、算定表のベースとなる標準算定方式という計算式に従い婚姻費用を計算します。
1−4.婚姻費用の請求の手続
婚姻費用について、夫婦間での話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に対し、婚姻費用の分担を求める調停や審判を申し立てることができます。調停手続では、調停委員が夫婦双方から話を聞き、話合いを進めます。話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が必要な審理を行った上審判をすることになります。
2 離婚後に備えて
このように、離婚する前であれば、収入の少ない配偶者は、収入の多い配偶者から婚姻費用を受け取ることができます。しかし、婚姻費用の支払義務は夫婦間の生活保持義務に基づいて認められるものであるため、離婚が成立した場合には婚姻費用の支払義務は消滅します。
そのため、経済的に余裕がない場合は、婚姻費用の支払いがある間に、離婚後婚姻費用の支払いがなくても生活していけるよう方策を立てる必要があります。
3 最後に
経済的に余裕がない場合は、婚姻費用の支払いを受けながら、離婚や離婚後の生活の準備を進めることを考えましょう。
より詳しいことについては、一度離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてください。
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