将来受け取る予定の退職給付金は離婚時の財産分与の対象ですか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
退職給付金というのは、退職時に支給を受ける金銭です。ですから、財産的な価値があります。退職給付金については、すでに給付を受けている場合もありますが、将来、給付を受けることになる場合もあります。
将来、受給することになる退職給付金については、いろいろ問題があります。現在、社会状況や経済状況の変化が激しくなっていますので、将来の退職給付金の給付の有無と給付額を予測することは非常に困難です。
したがって、受給できるかどうかはっきりしないものを財産分与の対象とできるのかということが問題となります。
また、たとえ将来の退職給付金の支給額を予測できたとしても、夫婦が離婚すれば、その後の退職給付金の形成に寄与・貢献をどのように評価すべきかということも問題となります。
こうしたことから、実務では、将来の退職給付金については、数年後に退職し、その時点の退職給付金の額が判明している場合に限り、財産分与の対象財産とし、その額については、数年後に給付される額を現在の額に引き直して計算(通常、ライプニッツ係数等を用いて現価を算出します。)し、10年後、20年後の退職給付金については、財産分与の対象とはしないことが多いようです。
また、将来の退職給付金は予測できないとして、基準時における支払額、つまり別居時又は離婚時に退職した場合の退職給付金を財産分与の対象とし、これを稼働期間と婚姻期間で按分する方法が採られることも多いようです。ただし、数年後又は基準時における退職給付金については、夫(又は妻)の勤務先から資料を提出してもらわなければなりませんが、当事者の協力が得られないことも少なくありません。
なお、退職給付金が財産分与の対象となるとしても、妻(又は夫)は、婚姻期間中しか寄与・貢献していないので、たとえば、夫が10年間勤務して200万円の退職給付金を得たが、婚姻期間は7年間であった場合には、「200万円÷10年×7年=140万円」という算出方式で、財産分与の対象金額を算定します。
より詳しいことにつきましては、離婚の実務に精通した弁護士にご相談ください。
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