【パターン別】離婚前に準備すべきことを弁護士が解説
- 執筆者弁護士 山本哲也
離婚する際には、離婚協議や調停を開始する前に様々な準備をしておく必要があります。
いきなり相手に離婚協議を持ちかけてもうまくいかないケースが多いので、適切な準備方法を知っておきましょう。
また離婚の準備内容は、離婚原因によっても変わってきます。
今回は離婚前に準備すべきことをパターンごとに弁護士が解説しますので、離婚を考えている方は是非参考にしてください。
1.相手が不倫をしている場合
まずは相手が不倫している場合の準備方法をみてみましょう。
相手が不倫している場合、不倫の証拠を集めなければなりません。
証拠がないと、離婚も慰謝料請求もできなくなってしまう可能性が高まります。
肉体関係の証拠となるもの
法律上、不倫(不貞)を証明するには「配偶者と不倫相手の肉体関係の証拠」が必要です。
たとえば以下のようなものを集めましょう。
- 性交渉の際に撮影された動画や画像
- 相手が不貞について書いている日記
- 性交渉していることがわかるLINEやメールの記録
- 産婦人科の領収証
- 妊娠した子どものエコー写真
- 探偵の調査報告書
間接的な証拠となるもの
直接的に肉体関係を示せるものでなくても、間接的に証明できる証拠もあります。
以下のように、不貞に関係しそうなものはすべてとっておきましょう。
- クレジットカードの明細書
- 通話明細書
- 交通ICカードの記録
- 親しく交際していることがわかるLINEやメールの記録
2.DVの場合
相手からDV(家庭内暴力)を受けている場合にも離婚や慰謝料を請求できます。
DVを受けている場合には、暴力を受けている証拠が必要です。
DVの証拠となるもの
以下のようなものを集めましょう。
- 相手が暴れているときの録音や録画の記録
- 相手から暴力を振るわれてケガをした箇所の写真や動画
- 病院を受信したときの診断書
- 暴力について詳細に記録した日記
- 実家の親族や友人などに暴力を相談した際のLINEやメールの記録
3.相手が生活費を払わない場合
相手が生活費を払わない場合にも離婚請求できます。
生活費の不払いは「悪意の遺棄」として離婚原因に数えられるためです。
生活費を払ってくれない証拠となるもの
相手が生活費を払ってくれないために離婚せざるをえない場合には、以下のような証拠を集めましょう。
- 相手から送金を受けていた銀行通帳のコピー
- 相手に生活費の送金を求めた際のやり取りのメールや手紙など
- 相手の給与振込口座の通帳のコピー
4.家出された、同居を拒絶された
相手が正当な理由なく家出した場合や同居を拒絶した場合などにも離婚請求ができます。
その場合、準備として以下のような証拠を集めましょう。
- 相手に「戻ってきてほしい」と伝えた記録やそれに対する返信の記録
- 相手に「同居したい」と伝えた記録やそれに対する返信の記録
- 相手の不貞の証拠
家出したり同居を拒否したりする場合、相手は不倫しているケースも少なくありません。そのような場合には不貞の証拠も一緒に集めましょう。
5.モラハラの場合
いわゆる「モラハラ(モラルハラスメント)」被害を受けていた場合にも離婚や慰謝料を請求できます。
モラハラとは精神的な嫌がらせや圧迫する行為を意味します。
モラハラの証拠となるもの
モラハラを理由に離婚したい場合、事前に以下のような証拠を集めましょう。
- 相手から届いた威圧的なメールや相手とのやり取りの記録
- 相手から渡されたメモや手紙など
- 相手のモラハラ行為について詳細に記録した日記
- 相手が怒鳴ったり暴れたりしているときの動画や写真
- 相手が物にあたって壊れた場合の物の写真
6.相手の金遣いが荒い場合
相手と金銭感覚が合わずに離婚を希望される方も少なくありません。
金遣いが荒いからといって必ずしも離婚できるとは限りませんが、協議や調停で話し合いによって離婚することは可能です。
相手の金遣いが荒くて離婚したいなら、金遣いの荒さを証明するための証拠も必要です。以下のようなものを集めましょう。
- クレジットカードの明細書
- 買い物や遊興費の領収証
- 家計簿
- 相手に「節約してほしい」と伝えた記録やそれに対する返答の記録
7.性格の不一致
日本で一番多い離婚原因は、性格の不一致です。ただ性格の不一致は法律上の離婚原因になっていません。
性格が合わないからといって必ずしも離婚できないので注意が必要です。
相手の行動において我慢できないところを整理する
性格の不一致で離婚したい場合、相手と離婚協議や調停を始める前に、どのような点で我慢できないのかを整理しておきましょう。
相手から「なぜ離婚したいのか」と質問されたときに理由を伝えて説得するためです。
調停になったときに調停委員に説明する必要もあります。
時系列表を作る
将来、調停になったり弁護士に相談したりする機会もありうるでしょう。
調停委員や弁護士に説明するために、結婚してから現在にいたるまでの出来事をまとめた時系列表を作り、事実関係を整理しておきましょう。
8.子育てや家事に非協力的
相手が子育てや家事に非協力的なので離婚を検討するケースもよくあります。
ただし相手が子育てや家事に非協力的であっても、離婚できるとは限りません。
程度にもよりますが、単純に子育てや家事に多少非協力的でも法律上の離婚原因にはつながりにくいためです。
ただ、こちらが相手の行動に不満を持っていることは相手に伝えなければなりません。調停になれば調停委員にも相手の行動について、伝える必要があるでしょう。
パートナーが家事育児に非協力的であることが分かる証拠
そこで相手が子育てや家事に非協力的であることを示す証拠を集める必要があります。
たとえば以下のようなものを集めましょう。
- 夫婦それぞれの1日のスケジュールをまとめた記録(自分で作成する)
- 相手に「家事や育児を手伝ってほしい」と伝えた際のやり取りの記録
- 相手の行動について詳しく記載した日記
9.親権を希望する場合
離婚の際には、親権争いが生じるケースも多々あります。親権を希望するなら、以下のような準備をしましょう。
①子どもと一緒に住める環境を準備する
親権を取得するには、子どもと一緒に暮らせる環境が必要です。離婚後、実家に戻るのか今の家に住み続けるのか新たに家を借りるのかなど、状況によって子どもの居住環境が変わります。まずはどこに住むのかを決めておきましょう。
また自分が忙しくて子どもの世話をしにくい場合、監護補助者として親の助けが必要となるケースもあります。
親権を希望するなら、さまざまな観点から子どもと一緒に住める環境を整えておきましょう。
②子どもとの関係を良好にする
次に、子供との関係を良好にしておく必要があります。子どもがある程度大きい場合、子ども自身が親権者を決定できますし、そうでなくても子どもの意見も尊重されるケースがあるからです。
日頃から子供と接触する機会を増やしてコミュニケーションを意識しましょう。
③育児に積極的に関わる
親権を取得したければ、育児に積極的に関わる必要があります。相手に任せきりにしてはなりません。裁判所の調査の際に「主な監護者」が自分であると認定してもらえる程度に、育児を主体的に行いましょう。
④別居の際、子どもと離れない
離婚前に別居するケースも多々ありますが、親権を取得したいなら別居の際に子どもと離れてはなりません。離れると、そのまま相手に親権が認められてしまう可能性が高まるためです。
たとえば家を出るなら子どもを連れて出るべきですし、相手が家を出るなら1人ででていってもらいましょう。
【参考】親権 |
10.専業主婦の場合
専業主婦の方が離婚する場合には、生活費の確保が重要となります。
特に相手と別居すると、たちまち生活に困ってしまうケースも少なくありません。
婚姻費用の請求
専業主婦だった方が別居すると、離婚が成立するまで相手に婚姻費用を請求できます。
婚姻費用の金額については法的な相場がありますし、相手が払わない場合には「婚姻費用分担調停」を申し立てて裁判所で婚姻費用を請求できます。
【参考】婚姻費用 |
婚姻費用の相場
事前に婚姻費用の金額について調べておくとよいでしょう。夫婦の年収ごとの婚姻費用の金額はこちらにまとまっているので、ご参照ください。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について/裁判所
例として、次のようなケースでは月14~16万円が婚姻費用の相場です。
- 夫の年収(会社員)が650万円
- 妻の収入は無し
- 小学生の子どもが2人
婚姻費用の相場は夫の年収や子どもの人数・年齢によって金額が変動します。
また婚姻費用を算定するには、夫婦お互いの収入を明らかにしなければなりません。離婚協議を持ちかける前に、相手の給与明細書や源泉徴収票を集めておきましょう。
11.熟年離婚の場合
熟年離婚の場合には財産分与が非常に重要となるケースが多数です。
婚姻期間も長くなり、夫婦共有財産もそれなりに積み上がっている事案が多いからです。
熟年離婚で集めておくべき証拠
適切に財産分与を受けるには、夫婦間でどのような財産があるかを明らかにしなければなりません。相手の財産隠しを防ぐとともに、財産の資料を集める必要があります。
たとえば以下のようなものを集めましょう。
- 銀行預金通帳のコピー
- 保険証券
- 不動産売買契約書
- 不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)
- 証券会社から届いた資料
- 車検証
ネット銀行やネット証券内の財産や電子マネーなども財産分与の対象になります。相手がこういった取引をしていないかなども、できる範囲で確認しておきましょう。
【参考】熟年離婚を考えている方へ |
12.パターンによらず共通して準備しておくこと
以下のような準備は、離婚のパターンによらず行っておくべきです。
①希望する離婚条件を決めておく
まずは自分の希望する離婚条件を決めましょう。相手に離婚協議を持ちかける際には、自分の希望する離婚条件を相手に伝えて検討してもらう必要があるためです。
決めておくべき離婚条件は以下のとおりです。
上記について、それぞれ自分の希望をまとめておきましょう。
②離婚後の生活についてシミュレーションする
どのようなケースであっても離婚後の生活についてのシミュレーションが重要です。
経済面、居住場所、子どもを引き取るかどうか、仕事のことなどをできるだけ詳細にシミュレーションしておきましょう。
具体的にイメージができていれば、いざ離婚となったときに焦らずに済みます。
「こんなはずじゃなかった」と後悔することもないでしょう。
③弁護士に相談する
離婚問題に迷った場合には、弁護士に相談するようおすすめします。弁護士であれば状況ごとにどのような点に特に注意すれば良いか教えてくれますし、わからないことや不安な点を尋ねたりもできます。
相手との交渉が必要になった際には代理人も依頼できるので、心強いでしょう。
離婚問題に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみてください。
13.弁護士に相談するメリット
弁護士に離婚問題を相談すると、以下のようなメリットがあります。
適切なアドバイスをしてもらえる
弁護士に相談すると、離婚のパターンなど状況別にその方に適したアドバイスを受けられます。どのように行動すれば良いかわからない場合には正しい行動指針となるので役立つでしょう。
集めるべき証拠がわかる
離婚の際にはさまざまな証拠が必要となります。ただどのような証拠を集めれば良いかわからない方も多いでしょう。弁護士に相談すればどのような証拠を集めるべきか、集め方も含めてアドバイスしてもらえます。場合によっては弁護士が職権によって財産分与の資料を集められます。
間違った対応をしないので将来有利になりやすい
離婚の際、自己判断で行動すると間違った対応をして不利になってしまうリスクがあります。
弁護士に相談すれば適切なアドバイスを受けられるので、将来不利益を受けるリスクを低減できるのもメリットとなるでしょう。
代理交渉や調停・訴訟の代理人を任せられる
離婚の際には相手との交渉や調停、訴訟対応などが必要となります。
自分で進めるのが難しい場合、弁護士に代理人を任せられます。たとえばDV事案の場合、弁護士に代理人を任せると身の安全を確保しやすいでしょう。
希望する条件で離婚しやすくなる
自分で離婚交渉や調停・訴訟などを行うより、専門家である弁護士に依頼した方が希望する離婚条件を通しやすくなるものです。より有利な条件で離婚しやすい点も弁護士に依頼するメリットとなるでしょう。
ストレスを低減できる
離婚問題を抱えていると、非常にストレスがたまるものです。
弁護士に依頼すると自分で相手と直接話さなくて良くなりますし、法律の専門家が味方になってくれているという安心感もあり、ストレスを低減できます。精神的な負荷を軽くできるメリットもあるといえるでしょう。
14.山本総合法律事務所に相談するメリット
山本総合法律事務所は群馬県高崎市で離婚問題に積極的に取り組む弁護士事務所です。
以下のような特長があります。
相談件数3400件超 県内トップクラスの実績
山本総合法律事務所では2007年の開業以来、これまで3400件を超える離婚・慰謝料請求に関するご相談をお受けしてきました。豊富な経験によって蓄積された知識やノウハウにより、相談者さまを全面的にサポートいたします。
【参考】山本総合法律事務所の解決事例 |
専門性を持った8名の弁護士が親身に対応
山本総合法律事務所には8名の離婚や慰謝料問題に高い専門性を有する弁護士が在籍しています。常日頃から「気さくに話せる地元の弁護士」となるべく、ご相談をお受けしたときから案件の解決まで、親切・丁寧な対応を心がけています。
ご安心してご相談ください。
ワンストップで離婚問題を解決
離婚の際には税理士や司法書士などの他士業による協力が必要となるケースもあります。
山本総合法律事務所は離婚問題に精通している信頼のおける司法書士や税理士との提携関係があるので、どういったケースであってもワンストップで解決まで依頼者さまに伴走いたします。
複雑な財産分与にも対応
離婚の際、財産分与は非常に重要です。ただ財産分与は非常に複雑になるケースも珍しくありません。山本総合法律事務所では以下のような複雑な財産分与の案件にも対応しています。
- 相手が財産を隠している
- 多種多様な財産があって財産調査に難航する
- 評価の難しい財産がある
- 自宅に住宅ローンが残っている
難しい事案であっても当事務所であれば長年にわたって培われた知識経験やと日頃の研究によって、適切に対応いたします。
群馬県で離婚を考えている方は、お気軽に山本総合法律事務所までご相談ください。