調停で離婚が成立したのですが、離婚届はどのように提出するのですか。
- 執筆者弁護士 山本哲也
調停で離婚が成立したら、10日以内に本籍地の役場に離婚届を提出する必要があります。
期限を過ぎると「過料」という金銭的な制裁を加えられる可能性もあるので、早めに手続きを行いましょう。
以下では離婚調停成立後の離婚届提出方法について、役所へ持参すべき必要書類や提出期限、一緒に行うべき手続等を含めて群馬県高崎市の弁護士がご紹介します。
1.調停成立後の離婚届の提出方法
離婚調停が成立しても、すぐに戸籍が書き換わるわけではありません。
当事者が役所へ調停調書を持参し、離婚届に必要事項を記入して提出する必要があります。
離婚届が受理されてはじめて戸籍が書き換わります。
調停で離婚が成立している場合、離婚届に相手の署名押印は不要です。
届出義務者となった側が1人で役所へ行けば離婚届ができるので、早めに調停調書を持って役場へ行き、手続きをしましょう。
法務省のサイトで記載例を確認できますので、ご覧ください。
法務省|離婚届 https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-3.html
2.離婚届提出の必要書類
調停成立後、離婚届を提出する際には以下の書類が必要です。
調停調書の謄本(または省略謄本)
調停離婚の場合、離婚届に署名するのは届出義務者だけで良いかわりに、調停調書の謄本が必要となります。
一般的には、離婚届に必要な内容のみが記された「調停調書の省略謄本」という書類を裁判所から発行してもらい、離婚届と一緒に提出します。
「調停調書の省略謄本」を発行してもらいたい場合、調停成立時に家庭裁判所の書記官へ申請しましょう。
調停調書の作成を依頼してから完成まで数日かかる事もありますので、スムーズに離婚届を提出できるよう、調停成立時に申請する事をおすすめします。
なお、申請時には手数料を収入印紙で納付する必要があります。印紙は取り扱いのある郵便局、コンビニ等でも購入できます。事前に裁判所の書記官に手数料の金額を問い合わせておけば、必要な金額分を購入できます。
また、完成した省略謄本を郵送してもらうのか、再度出向いて窓口で受け取るのかも選択する必要があります。
10日以内に離婚届を提出しなければいけない事を考えると、なるべく窓口で受け取った方がスムーズでしょう。
戸籍謄本
本籍地以外の役所で離婚届を提出する場合には、戸籍謄本も必要となります。
離婚届の提出に備えて早めに準備しておきましょう。
本籍地が遠方の場合、郵送で取り寄せを行う必要があるでしょう。郵送の場合、最短でも1週間程度かかる可能性がありますので、調停成立前に取り寄せておくと安心です。
本人確認書類
離婚届提出時に本人確認される可能性があります。
運転免許証や保険証などの本人確認書類を持参しましょう。
離婚届への押印は不要
離婚届には届出人の印鑑を押印する必要がありましたが、令和3年9月1日より押印が任意となりました。
これにより、押印は不要となり署名のみで受付してもらえます。
3.離婚届は申立人と相手方、どちらが提出するか
離婚調停が成立したとき、離婚届を申立人と相手方のどちらが提出するかは、調停調書の記載によって異なります。
基本的には申立人が提出義務者となりますが、調停調書に「申立人と相手方は、本日、相手方の申し出により、調停離婚をする。」と記載されている場合には、相手方に届出義務があります。
実際には妻が提出するケースが多い
ただし申立人が夫の場合、相手方となっている妻が届出を行うのが一般的となっています。
日本では婚姻するときに、妻が夫の戸籍に入っているケースが多いからです。
婚姻時に相手の戸籍に入った配偶者は、離婚するときに実家の戸籍に戻るか自分の新しい戸籍を作るか決めなければなりません。
離婚届の提出時にどちらにするかを決めて用紙に記入する必要があるため、相手の戸籍に入った側が届け出をした方、が選択結果を正確に反映させる事ができるからです。
婚姻時の苗字を使い続けたい場合
また妻が夫の苗字に変わっている場合には、離婚後も婚姻時の苗字を使用し続けることができます。
これを「婚氏続称」といいますが、婚氏続称するにも届出が必要です。
名義変更の面倒な手続きや、周囲に「苗字が変わった」事を気にされる煩わしさを避ける事ができますので、婚氏続称を選択する方も増えています。
婚氏続称の手続は、離婚調停成立日の翌日から数えて3ヶ月以内に行う必要があります。
ただし、離婚届の提出時に一緒に婚氏続称の手続きをしてしまえばスムーズですし、手間も少なくて済みます。
夫が申立人の場合は、調停調書の文言に注意
以上のように、離婚届を提出する際は相手の戸籍に入った側(妻)が行うほうが合理的です。
離婚届の提出義務者は基本的には調停の申立人であるため、夫が申し立てた離婚調停の場合は調停調書に「相手方の申出により離婚する」という文言を入れてもらえば、妻が離婚届を提出できるようになります。
夫が申立人、妻が相手方となっている場合には調停成立時の文言にも注意しましょう。
義務者が離婚届を提出しないとどうなる?
調停で離婚届を提出すべき当事者が一定期間内に届出をしない場合には、相手当事者が提出できるようになります。
離婚の成立が無効となってしまう事はありません。
調停が成立してから10日以内に義務者が離婚届を出さない場合、相手方の方から離婚届を提出できると法律で定められています。
相手が離婚届を提出したか不安な場合の対処方法
戸籍謄本を取り寄せると離婚届が提出されているかどうかがわかります。
相手が離婚届を提出する取り決めとなっていて、相手が届出をしたか確認したいなら、調停成立後2週間くらい経ってから戸籍謄本を申請してみてください。
もしも未提出であれば相手に督促するか、自分で調停調書を持参して役所へ行き、離婚届を提出しましょう。
4.年金分割について
調停の条項で年金分割の割合について定めた場合、年金分割の手続きも別途必要です。
年金事務所もしくは共済組合で離婚調停が成立した日から2年以内に手続きを行う必要があります。
また、手続きの際には年金の内容のみが記載された「調停調書省略謄本」という書類も必要です。
離婚届の提出時に必要となる省略謄本とは別の書類ですので、こちらも併せて申請しておくと手続きがスムーズです。
また、年金事務所に出向く場合は、調停調書省略謄本があれば元配偶者と一緒にいかなくても手続きが可能です。
その際、年金手帳や婚姻期間等が分かる戸籍謄本等が必要となります。
なお、手続き期限が2年と長期ではありますが、離婚前の配偶者が死亡してしまった場合、死亡から1ヶ月以内が期限となります。
死亡した事を知らなくても関係なく期限が来てしまいますので、なるべく早めに手続きしておく方が賢明でしょう。
5.子の氏の変更について
調停離婚に限らず、離婚が成立しても子どもの戸籍に影響はありません。
親権を持つ側が戸籍から抜けた場合でも、子どもは元の戸籍に入ったままとなります。
そのため、子の氏(苗字)が親権者と別になっている場合、氏を同じにしたいのであれば手続きが必要となります。
裁判所に「子の氏の変更許可の申立」を行い、変更許可の審判書をもって役所に「入籍手続」を行えば、親権者と子で同じ氏を名乗ることができます。
なお、婚氏続称の手続きを行っている場合には、「子の氏の変更許可の申立」は不要です。
6.まとめ
以上、調停成立後の離婚届の提出方法をまとめると、以下のようになります。
届出人 | 申立人 (調停条項に「相手方の申出により」とされていれば相手方) |
届出期間 | 調停成立の日から10日以内 |
離婚届出用紙 | 各市区町村役場に備え置かれています。 |
添付書類 | 調停調書謄本(又は省略謄本) ※本籍地以外で届出をする場合には戸籍謄本が必要 |
群馬県の山本総合法律事務所では、2007年の開業以来、3500件を超える離婚にまつわるご相談が寄せられました。離婚トラブルの解決に関しては、多数のノウハウと実績があります。
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