家庭内暴力があるのですが、これを理由に離婚が認められますか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
夫や妻からの家庭内暴力で苦しんでいる場合、ご自身のためにもなるべく早く離婚を検討するべきでしょう。
しかし、暴力が一度きりであったり、配偶者が離婚を望んでいない場合は裁判で離婚が認められない可能性があります。
家庭内暴力が離婚理由として認められるかどうか、群馬県高崎市の弁護士が解説します。
1.「暴行」が離婚原因になるには
婚姻を継続し難い重大な事由にあたるかどうかがポイント
離婚原因については、民法770条1項が定めています。例えば、不貞行為、3年以上の生死不明、強度の精神病などが離婚原因として挙げられています。そして、このほか、婚姻を継続し難い重大な事由が、離婚原因になるとされています。
婚姻を継続し難い重大な事由は、婚姻関係が破綻して回復の見込みがない場合に認められます。
暴行が離婚原因として認められるためには?
そこで、配偶者からの暴行が離婚原因に当たるというためには、その暴行が、婚姻関係を破綻させ、回復の見込みがない状態にさせるものであったといえることが必要です。
もっとも、実際には、暴行だけでなくその他の事情も合わせて総合的に考慮して、婚姻関係の破綻等が認められることが多いです。
また、暴行があったとしても、その他の事情を理由として婚姻関係の破綻等が認められることもあります。
2.暴行を理由とした離婚裁判
実際に、裁判所がどう判断したかを見ていきましょう。
離婚を認めたもの
夫がたびたび妻に物を投げつけることがあったが、あるとき、ハードカバーの本1冊を投げつけ、それにより、妻に視力低下やPTSD等の後遺障害が残ったケース (東京地裁平成18年11月29日判決) |
→ 裁判所は、夫の暴行と妻の怪我により、婚姻関係が完全に破綻したと判断しています。
離婚を認めなかったもの
夫が妻を転倒させて首を絞め、「今日という今日は殺してやる」と怒鳴り、腕や胸に打撲を負わせたケース
(東京高等裁判所昭和53年3月29日判決) |
→ 裁判所は、暴行が不法であるとしつつも、これまでこのほかに暴行を加えた形跡がないことや、暴行の背景に、妻が夫の権利証を持ち去ったという事情があることなどを挙げています。そして、夫が婚姻継続を望んでいること等を挙げ、婚姻関係継続が著しく困難であるとは断じられないとしました。
暴行と他の事情を総合的に考慮して離婚を認めたもの
夫が、妻の面前で物を投げたり壁を叩いたりする間接的暴行を行っており、その他借金に関する度重なる隠し事をし、ホステスと親密な交際をしていたケース (東京地裁平成17年10月12日判決) |
→ 裁判所は、これらの事情を合わせて総合的に考慮し、婚姻関係が破綻していると認めました。
3.まとめ
以上のように、配偶者の暴行を理由として離婚が認められる可能性はあります。しかし、必ず離婚が認められるとは限りません。また、暴行と他の事情を総合的に考慮して離婚が認められる場合が多いです。さらに、暴行があったとしても、その他の事情を基礎に離婚が認められる場合もあります。
そこで、家庭内暴力がある中で離婚を望む場合は、家庭内暴力のほか、夫婦の間に起こった様々な事情を基に、離婚が認められるかどうかを検討する必要があります。
より詳しいことについては、一度、離婚に精通した弁護士に相談してみることをおすすめします。
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